戦いたい

戦いへの渇望


 2019年5月1日、2日、東京でゲームのビッグイベントが行われた。スマブラSPの超大規模大会『ウメブラ Japan Major 2019』だ。

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ウメブラ Japan Major 2019 PV

 その時福井に住む親友のもとを訪れていたオレは、その配信に釘付けになっていた。オレはポッ拳の前はスマブラWiiUの大会に常連として参加しており、今でもスマブラはトップクラスに大好きなゲームだ。

 しかし、ポッ拳のプロプレイヤーとして活動する今は何かの機会がない限りは自分でスマブラをプレイすることはない。特別好きなゲーム故に、もう自分は勝敗を度外視するという意味でのエンジョイ勢としてはプレイできないことを知っているからだ。熱が入りすぎれば本業の邪魔になる。

 そんなこともあり意図的に距離を置いていたスマブラだったが、ウメブラJMの配信はなかなかオレの目を離してはくれなかった。別に視聴者とわちゃわちゃしたかったわけではない。特定の対戦カードを観たかったわけでもない。ただ、画面の向こう側にはかつて憧れた大舞台があった。それと同時にある記憶を呼び起こした。

 2015年のことだ。ウメブラが1周年記念として『ウメブラ First Anniversary Tournament(ウメブラFAT)』という大会の開催を決定。せいぜい中堅程度の実力でこそあったがスマブラWiiUのプレイヤーだったオレは、その大会を大一番と捉え修行に励んでいた。

 しかし、事前に予定があると再三伝えていたにも関わらず職場から離島への出張を強制され、オレのウメブラFATは敗北することさえ許されず幕を閉じた。当時のことは思い出すだけで吐き気がする。その日の為に鍛えていたライバルたちは勝敗に一喜一憂し、大会が幕を閉じれば次に向けて各々が決意を固め日々の修行に戻る。

 そんな青春とも言うべき熱い物語を紡ぐライバルたちとは裏腹に、オレは魂が抜けたような状態だった。

戦いたい。もっと挑戦したい。

 そんな叶うことのない願いを聞き、抜け殻のようだった当時のオレを支えてくれたのが福井に住む親友だ。配信の視聴中彼は仕事に出ていたため隣にはいなかったが、彼の家でスマブラのビッグトーナメントを観るというのは当時を思い出すにはキーが揃いすぎていたように思う。

 ポッ拳に自らの戦場を移したオレにとって、目指す舞台は当然公式世界大会ポケモンワールドチャンピオンシップスに他ならない。その熱狂たるや他のタイトルにも決して引けを取るものではない。この舞台こそ正真正銘の最強決定戦であり、誰が何と言おうとそこで勝った奴が最強だ。

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ポケモンワールドチャンピオンシップス2019ポッ拳部門GrandFinal

 GWの頭にヨーロッパ予選が行われ、4つあるうち現在2つの予選が幕を閉じた。ギリギリながらもオセアニア予選で本戦出場の切符を獲得しているオレは、ウメブラJMの配信を見届けて後、ゲーマーとしての渇望を思い出す。

勝ちたいと思える相手がいるなら、勝ちたいと思える舞台があるなら、オレは迷わず挑戦する。

 別に意識の高いことが言いたいわけではない。少し前ゲームとは全く関係がない場面で意識の高いこと言われ続け、相当に不快な思いをしたくらいだ。ただ、オレは挑戦したい。あの時敗者にさえなれず、人生に絶望した記憶が残っているからだ。オレはあの時の絶望を、親友への感謝を、一生忘れないと思う。

 今の世の中意識の高い言葉が溢れてる。ドヤ顔で事情も知らない奴から振り下ろされる刃物じみた正論に傷付いてる人は割とよく見かける。頑張れ。努力しろ。言ってほしいのはそんな言葉じゃないと思ってる人は少なくないはずだ。ただオレはこう思ってる。

頑張ればっかり言われるのは誰だって辛い。
でも、好きなことでさえ誰からも頑張れと言ってもらえないことはもっと辛いよ。 

 だから、好きなことに全力で。限りある命。全ては後悔しないためにな。



嘘をつかないこと


 GW終盤に行われた格闘ゲームの祭典『KVO×TSB2019』ポッ拳部門では4位という結果で終わった。100人規模の大会で4位ではない。参加者60人弱。それらが3人1組のチームになった中での4位だ。結果はもちろん、プレイ内容からもあまりに不甲斐なかったと思う。

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 原因として真っ先に思い当たるのが練習不足。偉そうに毎週攻略記事を書き、隔週で初中級者プレイヤーを招き丸一日指導して。でも、自分がトッププレイヤーであり続けるための努力は全然足りていなかった。

 記事の作成にはだいたい3~4時間くらいかかるし、指導についてはレベル差と指導効率の都合から自分はほとんどプレイしないなんてことも多い。これでは練習の時間も少なくはなるが、純粋に自己管理不足だと思っている。

 何故なら攻略記事の作成やモチベある新規プレイヤーへの指導というのオレだからこそ出来ることであり、プロとして他のプレイヤーとは異なる貢献が出来ているかという自身からの問いへ回答を出すものだからだ。仕事として言える活動のチャンスを貰えているのはとても恵まれていることだと思う。

 ただ、それでもその活動を僅か数%なりとも言い訳にしている自分がいたのも事実。しかしそれでは本末転倒というもの。何故ならオレは何よりルカリオと共に戦って勝ちたいプレイヤーであり、限りある時間の中No.1を獲りに本気で喰らいつくことこそがあの時の記憶を糧にするということだからだ。

 勝ちたいと思ってるのに、口にしてるのに、心のどこかで無理だと決めつけてはいないか。チャレンジャーとしての精神に微塵の綻びもなく戦うこと。敵はいつだって自分だ。だからオレは自分にこう言いたい。

なりたい自分に嘘はつくな。

 ポッ拳にはルカリオがいる。勝ちたいと思えるライバルたちがいる。世界一憧れる人に観てもらえる舞台がある。ならば、そこに全力でなければオレじゃない。

 6月に行われるポケモンジャパンチャンピオンシップス。そして8月にアメリワシントンD.C.で行われるポケモンワールドチャンピオンシップス。ここにポッ拳プレイヤーとしての全てをぶつけると決めた。もう迷いはない。オレは本気で獲りにいく。

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