懸けろ プライド

【変わったこと】


 スマブラのプロコーチから学べる有料コンテンツ『カイトスクール』のオフイベントでトーナメントに参加していた時のこと。

「クロスさん、メンタル強いですよね」

 二度に渡り初戦からルーザーズに落ちるも、しぶとく勝ち進むオレを見たライバルから言われた言葉だ。

 トーナメントにおいて早くからルーザーズに落ちることは、対戦回数が増えるため好成績を残しづらい。また単純に幸先が悪いため、そのまますぐに負けてしまうことが非常に多いという面もある。

 その中で粘り強く勝ち進むのだからメンタル強者に感じるのも当然なのだろう。しかしオレはその言葉に対しこう返した。

「考え方が変わって謙虚になったんですよね。相手も本気なことを認めたらあまり緊張しなくなりました」

 勝ちたい気持ちはそのままに、相手の情熱を受け入れる。負けてもいいとか、負けても仕方がないというわけではない。ただ相手がしてきたことに敬意を持つこと。そうすることでピンチや敗北に対する焦りや苛立ちは大きく減ったように思う。

 その考えに至ったのは、無意識に繰り返すうちに露呈したある大きな失敗によるものだ。



【友達の一言】

 オレはスマブラプレイヤーだが、ノンガチゲーマーの友人と遊ぶ際に別ゲームを触ることがある。その一つスプラトゥーンを通話しながら遊んでいた時のことだ。

 他のゲームをするとプレイ時間の圧倒的な差もあって大抵オレが一番弱い。スプラトゥーンだとエイムが合わず見えている相手にすら撃ち負けることがよくある。

「なんでこんな奴にやられんだよwww」

 それに対してキレ芸のように笑いながらキレることがよくあるが、その日のオレはやたらと敵に倒されてしまう。実力的に一番不足なのは周知の事実なのだが、それ故にカバーしようとした味方の連携にさえ気付かなかったオレはソロプレイ同然の動きを繰り返してしまう。

 結局その日は負けがかさんで終了。普段負けると空気が悪くなるといったことはないのだが、オレのプレイを見かねた親友が呆れた様子でメッセを送ってきた。

「なんか調子に乗ってるよね」

 オレは普段相手に対し不快感を感じてもそれを表に出すことはほとんどない。それ故軽く謝る形で返答したが、内心は怒り心頭だった。

 なんだよその言い方は。同じ言い方されたらお前は絶交だとか言い出すだろ。プライドを懸けて勝負の世界を生きてきたオレに、たかだか少し強い程度の奴がふざけた口利くんじゃねえよ。

 きつい言葉がプライドを刺激し、逆鱗に触れたと言っていい。次の日の朝を迎えても怒りは全く収まることがなかった。

 それからというもの数日間何をやっても上手くいかず、その度に親友の言葉が頭を過っては振り払う日々が続く。

 そしてさらにはその少し前、ある相談中に別の友人から言われた言葉を思い出す。


「クロスさんの向上心はすごいけど、なんか上から目線なところあるよね」

 彼は波乱万丈の人生を送りながらそれを微塵も感じさせることなく振る舞い、仕事も飲みの幹事もそつなくこなす。所謂仕事ができる人だ。ネタキャラのようでありながら、接し方を変えると見えてくる人としての深みに信頼があった。

 しかし、いざ話をしていくと本当はこう思っていたという事実を突きつけられる。その時はいったん受け止めたが、それでも本心は煮えたぎるものがあった。

 うるせえ。見下してんのはお前の方だろ。努力じゃどうにもならないものもあることを知ってるからオレは本気でやってんだ。

 信頼の厚い2人がいよいよ敵に回ったと感じたオレは、周りのほとんどが敵に見えるようになってしまう。プロゲーマーを引退して以降多くあった周囲の態度の変化と重なり、結局どいつもこいつも結果で黙らせるしかないんだと。

 感情を捨てて周囲にとって都合の良い人を演じ続けるか、全てを敵に回しても望むものを獲りにいくか。

 まるでそんな究極の二択を迫られているような気になったオレの思考は凍ったように止まり、少しの間暗闇を彷徨うことになった。 



【見えない壁】

 スマブラをしていても思考がまとまらず、かといって誰かと会おうとも思えず。能動的な行動を起こす気力もなかったオレは、大好きなアニメ『僕のヒーローアカデミア』(通称ヒロアカ)を観ることにした。

 ヒロアカは現実味のある共感性の高いストーリーと、キャラクターの熱い心と言葉が魅力の王道少年漫画だ。その時なんとなくこの作品を見ようとしたのは、自分がしてきた努力を肯定してほしいと無意識に思っていたのだと思う。

 しかし、ある回での一言が自分の胸に突き刺さる。それは主人公のライバルにして天才肌の"爆豪勝己"が、多くの困難と葛藤の末に辿り着いたある気付きだった。

 "いつまでも見下したままじゃ自分の弱さに気付けねえぞ。"

 そこで初めて自分が人に対して壁を張ってきたことに気付く。

 オレの向上心は劣等感の裏返し。以前ある友人に自ら語った言葉だ。周りからは熱いとかポジティブだとか言われるけど、元からそうではないと。

 いろんなことを諦めてきた。失敗ばかりだった。だからこそ目先の苦労より、叶えたいことがどうやっても叶わないと確定してしまうことの方が何倍も辛いことをオレは知っている。そのどうしようもない状態になるのが怖いからこそ、虚勢を張ってる部分もたくさんあると。

 謙虚になんて心からなったら負け。そんなことないよなんて言われるのを待っているのはしょうもないし、やっぱ無理だよねと低レベル同士傷の舐めあいなんてするつもりはない。

 見下してるつもりなんてなかった。ただ、前回の記事にも滲み出ていた悔しさがオーバーフローし周りが見えなくなっていた。見下されるのが嫌で、見下すなよ見下すなよと壁を張るその態度が、周りから見れば見下していると感じるものだったことに気付く。

 ああ、なんで一時の感情で友達にあんなことを思ってしまったんだろう。オレは本気で勝負の世界を生きてきたとか、どこにプライド懸けてんだよ……

 こと親友においては物理的距離があることもあり、たまに会えたその時には真剣にものを語ることが多い。こいつが友達でよかったなと誇りに思えるようなかっこいい奴になるから見ててくれよなと。あの時の言葉は嘘だったのか……

 もしかすると友人2人がオレに向けた言葉は、嫌われるリスクを背負ってでも何かに気付いてほしくて勇気を振り絞ったのかもしれない。そんなことにさえ気付かず、敵と認識してしまったことがとにかく恥ずかしくなった。

 1人はこれまで最も多くオレの人生の転機に寄り添ってくれた人。もう1人は今年最も会って一緒に過ごした時間の長い人だ。そんな人の言葉さえ聞けず、この先どうやって上手くやっていけるんだろう。

 ただただ申し訳なさが込み上げたオレは、友人にあの時本当はこう思ってしまったということを伝え謝罪した。口にはせずともオレのことは分かっていたのだろう。成長したねとどちらも笑って許してくれた。

 一つ前の記事にも書いたような負けん気と正論は、裏を返せば自分の弱さを認めたくなかったからに他ならない。その気概が必要なところもたくさんある。誰が信じなくても1人でもやり抜く強い意志は必要だ。

 でも、たくさんの人と支え合い、伸ばし合うからこそ辿りつける場所がある。だからこそ人を巻き込み、人に巻き込まれる自分であること。なんでも1人でやろうとする足し算の人生ではなく、みんなで協力してより良くなる掛け算の人生に。

 無意識のうちに張り続けていた壁を払い、人の気持ちに寄り添うこと。今ようやくその入り口に立てたことが、プレイヤーとしてのメンタルを底上げしたのだと思う。

 先日行われたスマブラの大型大会『篝火』や、『カイトスクールオフ1周年記念』の大会では、頑張れ、お疲れさまとわざわざ個別にメッセをくれたのはあの2人だった。



【原点へ】

 上記は数か月前のことだが、この記事を書くにあたり絶対に謝っておきたい人がいた。それはオレの情熱の原点とも言うべき人だ。

 半年以上前にオレがある壁にぶつかった時のこと。それを知った彼がオレにかけてくれた言葉がある。

 "自分をハッピーに、優しくしてあげてね。"

 当時周りに壁を張っていることなど微塵も気付いていないオレにはその意味が分からなかった。厳しい現実に向き合おうと決めたオレに、堕落の道を示しているように思えたからだ。

 自分の立場守りたさに当たり障りのねえこと言うのはやめてくれよ。どうでもいいと思ってるから無責任なことが言えんだろ!

 文字では気を遣ってくれたことに感謝を装いつつも、本当はそう思ってしまった自分がいた。

 言わなければバレないし、なかったことにしておけばいいのかもしれない。それでもたくさんのものをくれた人に嘘をついていたくないと思ったオレは恐る恐る謝罪のメッセージを送る。

 あの時本当はこんなふうに思っていたと。やってしまったという後悔の気持ちが高まり、どうしても謝りたかったと。そのメッセージに彼はこう返信してくれた。


 "気持ちを伝えてくれてありがとう。そして、クロスはいつもかっこいいよ。そのままで、大丈夫。いつも、応援してる。慌てず焦らず、ひとつひとつ、何かを発見し、何かをつかめたら良いよね! 応援してるから。大丈夫だから。来年も共に歩んで行こうね!"


 恩返ししたいなどというエゴの重い感情をぶつけるつもりはない。ただ、情熱の原点としてたくさんのものをくれた彼にとって、かっこいいと誇りに思える存在になるために。

 何かをしていくうえで、何のためにやるのか。これから先どういう自分になりたいのか。日々関わる人たちと本当はどういう関係を築いていきたいのか。

 日常の中で目先に捉われ忘れがちなそれを、原点に返ることで改めて思い出せたように思う。

 来たる2021年、目指すところへ向けて一歩でも前へ。更に向こうへ。そこに懸けるものこそオレのプライドだ。

全力の、その先へ

【目標と期限】


 スマブラSPのレート戦スマメイト。かねてより8月末を中期目標の期限と定めていたオレは、目標レート達成のために対戦を重ねてきた。

 その目標レートは1800。正直オレのゲーマーとしての実力なら8月中に1600はいくと思っていた。上振れれば1700。ならば目標設定はタミアマ(初中級者向けオンライン大会)卒業ラインであり、絶対無理だと思う1800一択だった。常にイメージできる範囲の一歩先を見据える。それがこれまでの経験で学んだ上に行くための目標設定だったからだ。

 強くなるために加入したカイトスクール(上級者がアドバイスや情報をくれる有料コンテンツの一つ)において、加入当初に書く自己紹介における目標でも上記の目標と期限を書いてきた。(正直当時レート1500台を名乗るには数戦っていないだけの盛った方で、実際は数をこなすと1400台をうろうろしていた)

 そして8月最後となるスマメイト第10期。結果は1611でフィニッシュ。MAXでも1655であり、目標からは程遠かったことを思い知る。率直に言って悔しい。情けない。でも、恥ではなかった。

 まだやれることがあったはず。結果が出ていない以上そう考えるのは当たり前であり仕方がない。ただ、それでも後悔だけはしていない。それが8月末を迎えた素直な気持ちだ。 


【自分のしたいこと】

 8月末を目標に定めたのは他でもない、それまでメインタイトルとしていたポッ拳を引退したのが去年の8月だったからだ。スマブラに復帰したのはそれから1ヶ月以上後のことだが、この8月こそが自分が区切りとしていた時だった。

 ポッ拳をやめてから1年の間を振り返ると、正直死ぬほど悔しい日々の連続だった。元々自分と向き合うのは慣れてきたつもりだったが、日々己の矮小さと向き合うことがこれほどとは想像していなかったのが本音だ。

 引退の細かい理由は様々あれど、その大部分が将来を見据えてのこと。当時それを記事として公表した際は良い話として受け止める人が多かった。事実オレはその大半を感謝の気持ちを伝える部分に割いたし、感想としてはすごく打倒だと思う。

 ただ、当人としてはやめるという本来望んでいなかった選択をせざるを得なかったこと。どれだけ過去がよかったとしてもまだこれからの人生があること。それらを踏まえれば明確な失敗談であることは間違いない。

 実際終わってからというものは、ノンガチゲーマー(オンオフ問わず大会に出たor運営した経験がない人)の知人友人の大半が手のひらを返したようにナメ腐った態度を取るようになってきた。結果を出してから急に友達面してきた者もいたため予想はしていたが、分かっていてもしんどいものはしんどい。

 加えて好きなこと・得意なことの大枠が似ていることを理由に生まれてからこれまで散々比較対象にされてきた双子の兄弟が結婚。4人兄弟中1人だけが未婚となったことをきっかけに、親からは露骨に心配の対象として見られることが増えてきた。

 親の仕事の話。祖母が怪我で入院した話。真剣なことや悪い知らせは全部兄弟経由で耳に入る。

「あれ? 昨日電話したんだけどな」

 何故あの時言ってくれなかったんだろう。言えなかった理由はなんなんだ。考えれば考えるほど、人としての実力的な部分での信頼のなさ以外に理由が思いつかなかった。

 プロゲーマーとなった自慢の息子から、1人だけ未婚の心配の対象へ。これはあくまで一例だが、見下すとは別に周囲からは心配という名のもとに様々な選択を否定されることが増えていた。悪意の有無を問わず、あらゆる面における信頼の喪失。この落差こそが引退以降に直面した最大の地獄だったと思う。

 その中でずっと考えていたのは、自分が本当にやりたいことは何かということ。夢なんて綺麗なものでなくていい。哂われてもいい。多くを失ってなお自分の中に残る本当に大切なものは何か。

 ずっと一緒に戦ってくれたルカリオともう一度本気で挑戦したい。価値ある舞台で自分の全てを注いで戦いたい。

 結果出してない奴の本気や真剣という言葉ほど無価値なものはない。でも、たとえ誰が理解せずとも信用せずとも、全力を出すこと。その目的に価値があると信じ抜くこと。それこそが上に行くただ一つの道。オレはそれを肌で感じてきた。ならば……

"人の成功失敗を見て楽しむ傍観者モブでありたいのか"

"自分が挑戦していく主人公ヒーローでありたいのか"

 極論で語れ。人は生理現象にも近いレベルで無意識に他者を評価しているし、オレもそうだからそれ自体は否定しない。でも、人がすることだけに目を向けて何が楽しい?

 他人の人生を生きてんじゃねえんだ。人を評価して、見下して、下見て安心してる暇なんてねえんだ。結局自分がどうしたいのか。それが全てのはずだ。

 だから気持ちの矢印を自分に向けること。凡人、だからこそ望め。応援を、期待を待っても凡人に出番なんてない。だからこの手で全力で勝ちにいくんだ。戦いはもう始まっているんだから。


【勝負への姿勢】

 いざメインタイトルをスマブラと決めて取り組み約1年。初心者でこそなくなったと思っているが、競技シーンの1人として見るとまだ中堅層にも入れていないというのが体感だ。

 しかしそれでもレート1600まで来れたのは、スマブラ4をメインタイトルにしていた名残で持っていた、中堅上位以上の実力を持つ人たちの繋がりによるところが大きかったように思う。

 また、今年の5月以降はカイトスクールに加入したことで対戦環境が充実。コロナ状況下でオンライン中心を余儀なくされた環境において、カイトスクールに所属するモチベーションの高い人たちの存在は間違いなく成長の一助となった。

 ある日そんなカイトスクールで通話対戦中、初見の人と通話を始めるとこんなことを言われることがあった。

「クロスいがらしさんって確かポッ拳のプロでしたよね? プロゲーマーだったなんてすごいですね!」

 ツイッター相互でもないのによく知ってるなと思いつつ、褒められてちょっと良い気分になったのも束の間、いざ対戦を行うと結果は惨敗だった。バカか、オレは……

 相手に悪意はないし嫌味でもないのは知ってる。そのうえで言うけども、オレはもう1スマブラーだ。より価値のある舞台を求めてここに来た。中途半端ならいくらでも逃げ道はあった。それでもこの道一本でと決めたのは相応の覚悟があってのはず。なのに、かっこ悪ぃことすんなよ。

 頑張って結果出してる人たちに仲良くしてもらえれば満足か? 過去の栄光を羨ましがられて満足か? 違うだろ。一日も早く、最強になるために戦ってますと堂々と言える自分になりたい。だから無い金出してまで環境を買ってんじゃねえのか。

 教わったことは下意識に落とし込むまで修行しろ。人の立場につけ込むな。人の善意に甘えるな。お客様になりたいわけじゃねえんだ。かっこいいな、あんなふうになりたいなと思う人たちに、友達として、ライバルとして認められたらどんだけ人生楽しいだろう。そこを目指して戦うんだ。

 現実としてスマブラ自体が約3年のブランク。加えて当時でもよくて中堅層だ。SPから始めた人とも約1年の差がある。なんとなくで過ごしてその差を軽視するな。単なる時間だけじゃない。かけてきた想いの差がそこにはある。それを超えようと言うのなら相応の覚悟を持つことが求められる。

 かつて現在も全一ピカチュウ使いとして活躍し続けるESAMが来日した際に戦った時のことだ。あと一歩で勝てるという局面、自分の中で急激にブレーキがかかった経験がある。相手にとっては1先フリー対戦としてエンジョイプレイだったかもしれない。それでもあのESAMに勝てるものなら勝ちたい。だが自分の中の何かが勝つことを恐れた。

 ポッ拳のプロとしてデビュー戦となる公式戦に臨んだ時も同様だ。前回の公式戦で初優勝にしてプロプレイヤー。世界大会の出場権がかかった大事な公式戦という場で、今最も勢いのある注目プレイヤーでありながら、心のどこかで「オレが大会連覇なんて話がうますぎる」と考えていた。結果、優勝には程遠い位置で敗退。

 勝負に勝つということは相手は負けるということ。時にそれは相手を失意の底に落とすことでもある。

 ポッ拳時代に日本人単独で参戦した海外大会において、同じトップルカリオ使いであり良き理解者でもあるLCF(当時XAbsoluted)とのグランドファイナルでの話だ。

 優勝を決めた瞬間興奮したのも束の間、崩れ落ちる彼を前にしたオレの心に大きな何かがのしかかってきた。今思えばそれは彼のその大会にかけてきた想いだったのだと思う。

 そんな勝利も敗北も、オレはこの身で体感してきた。だからこそ相手がかけてきた想いを前に恥じない自分であること。またいつの日か舞台に立つのなら、今からその準備は始まっている。だから大袈裟なんてことは絶対にない。日々真剣にプレイすること。

 重ねたその在り方が、必ず望む場所へ連れて行ってくれると信じて。


【全力の、その先へ】

 冒頭で今回目標達成とならなかった件について恥とは思っていないと言ったが、実際は後で解釈を変えた結果によるものだ。スマメイト第10期の最終日を迎えた際「やっぱこんなもんか」が心の中の第一声だった。

 大々的にこそ言っていないが一部の人には目標を伝えていた手前、恥ずかしさが先に出る。もっと何かを削れたんじゃないか。やる気が出なかった時間をどうにかしていれば。

 こういう時に出てくるのが「オレはまだ本気を出してない」だ。

 何も生きていればゲームだけしているわけではない。将来のための環境改善然り、わざわざ公にせずともやらなければならないことは、向き合わなければならないことは山ほどある。それに向き合ってきた自分を自分で否定してどうする?

 本気出してこんなもんだってのを認めるのは怖いよ。でも仮に出してねえならそれが今の本気だ。出さなかった本気はもう自分の力じゃない。だからこそどんな結果でもそれが自分の全力と認めること。

 悔しい。ムカつく。情けない。

 やっぱりこいつすげえなって周りに言わせてやりたかった。オレをライトニングの劣化コピーのような扱いをしてきた奴らの手のひらを返させてやりたかった。今いろんな思いが渦巻いてる。

 そして何より、共に戦ってくれるルカリオにとって、今なお応援してくれる人たちにとって恥じない自分になりたい。

 だからこそ認める。悔しいけど、ムカつくけどこれが今の全力だ。そしてこれから行くんだ。全力の、その先へ

 これが決断から1年を迎えた今、オレが思う全てだ。

勝因と敗因

【EVO Japan 2020の成績】 

 1月24日~26日、幕張メッセで行われた格闘ゲームの総合イベント『EVO Japan 2020』

 オレは新たに挑戦すると決めたスマブラSP部門へエントリー。結果はDay2まで進出するも初戦敗退となった。

 この結果自体は他者との比較で見れば取るに足らないものだが、2019年10月22日に行われたウメブラSP6よりスマブラに復帰したことを考慮するとなかなかの好成績だと思う。

 事実『ウメブラSP6』および『ウメブラSP7』では本戦において1勝もすることなくストレート負けを喫していた。

 それもそのはず、まともにスマブラをプレイしていたのはかれこれ3年ほど前だ。新作においては発売日の1,2週間軽くプレイして以降、自身のメインタイトルに差し支えることを考慮し一切触ることはなかった。こんなプレイヤーが勝てるほどスマブラは甘くない。

 そんなオレがEVO Japan直前の平日大会で1勝したのを機にDay2進出を果たしたのは、プレイ時間やこれまでの成績を考えればかなり上振れたと言っていい。当然満足こそしていないが可能性を見出す大きな一歩となった。



【勝者の在り方】

 『EVO Japan 2020』を終えての月曜日。平凡な日常に戻り会社へと出社すると、ゲーマーの上司がさっそくEVO Japanについて語り始める。何やらオレの成績も調べたようで、世間的には大した成績ではない自分は内心苦笑しながらも改めてスマブラの勢いを感じていた。

 そして全員が出社したところで朝礼が始まった。EVO Japanが金曜日にスタートしたこともあり、有給を取っていたオレはみんなに一言お礼を言う。すると、上司が思わぬ言葉を掛けてきた。

「大会だったんでしょ? 成績はどうでした?」

 一瞬戸惑った。何故ならオレは今回の有給においてゲーマーの上司以外にはEVO Japan出場のためであることを公言していなかったからだ。

「3日あるうちの2日目まで行きましたがそこですぐ負けてしまいました」

 大したことのない成績を口にしたあと朝礼は終了。胸を張って言えない成績に悶々としながら席に着くと、隣のゲーマー上司が笑いながらこう言ってきた。

「金曜の飲み会では五十嵐さん勝ってるのかなってみんなで話題にしてたんだよ」

 それを言われた瞬間、あることに気付き愕然とした。みんなオレが対戦ゲーマーであることを知っており、休んだ理由を認識されていたにも関わらず今回の有給申請時の理由欄に"私用のため"と書いていたからだ。

 オレはゲーム大会を理由に休むことを恥ずかしいとは思っていないし、入社時の面接では最後に何かありますかと聞かれた際こんなことまで言っていたほどだ。

「オレはこの先プロになるので、不定期に海外大会で長期休むのを許してもらえれば他には何も望みません」

 その時2017年1月。当時メインタイトルとしていたポッ拳において上位にかすりもしない実力のうちから、これから上司になる初対面の人を相手に堂々と言い放ったことを今でも覚えている。その1年後『EVO Japan 2018』でオレは初優勝。その後プロプレイヤーとなった。

 そんなオレが何故今回の有給の理由を私用のためとしたのか。それはひとえに今の自分では"勝てないと思っていた"からだ。

 馬鹿かオレは……。ゲームで強く、絵を上手く、見た目をオシャレになど何でもいい。何かをよくしようとした時、最も障害となるのは"どうせ自分は"という諦めに他ならない。だからこそ誰よりも自分の成長に、成功に価値があると信じること。疑念の余地なく信じられるだけの行動をしていくこと。

 どちらかと言えば根っこは劣等感を抱え後ろ向きであるオレに天衣無縫的な在り方は難しい。ならば"勝てる"じゃなくていい。ダメだ、無理だを塗り潰すほど"勝ちたい"を大事にすること。

 自分が勝って一番得するのは誰だ。オレに決まっている。だったらそれを自分が一番信じてやれなくてどうやって実現すんだ? "勝ちたい"気持ちを自分で軽視すんなよ。

 何年も前から当たり前のこととして自分に言い聞かせてきたことが出来ていなかった。Day2初戦敗退という成績以前に、勝者足り得ない自身の在り方を公然に晒してしまったことがオレを絶望させた。

 ゲーマーでない一社会人にとって、そのタイトルの、広義で捉えればesportsのイメージを作り出すのは他でもない身近な者の存在だ。そこに現時点での成績や業界での知名度は関係ない。だからこそ堂々と挑戦し、一人一人が社会へその背中を見せることが大事だろう。

 それは一個人誰しもが出来る業界への貢献であり、同じように勝ちたいと願うライバルへの敬意であり、支えてくれるファンや共に戦うキャラクターに恥じないための在り方だ。

 分かってた。分かってたはずなのに、出来ていなかった。そのことが恥ずかしくてその場にいるのが居たたまれなくなるほどだった。

 リソースの少なさ故になかなかオフ対戦に参加できないこと。生活の環境改善が優先で思ったように練習できないこと。そういったことが重なるうちに自信が損なわれていたこと。

 理由はいろいろあるが、そんなことを理由に折れていいほどオレの勝利は自分にとって無価値ではないはずだ。ならば勝者足り得る自分であれ。プレイヤーとしてここは譲らないと決めてきたことを貫くために。

 "勝てるかどうかじゃない。勝ちたいから戦うんだ"と。



【プロの言葉、親友の言葉】

 当たり前にしてきたはずのことが出来なくなっていることにただただ絶望していたが、業務に差し支えるためなんとか気持ちを持ち直そうとしていたオレはある日の出来事を思い出す。

 自身のため。還暦を迎えた両親のため。どうにか今以上に稼ぎこれからの未来の為に備えなければいけない現実を受け止め、ゲームに全く手をつけなくなっていた去年の10月頃。たまたま目についたのがスマブラSPの大型大会『ウメブラSP6』の告知ツイートだった。

 環境改善が必要なのは分かった。だが、そもそも何のために環境を改善するのだろう。自身のためであるが、ならもし仮に経済面に困らなくなったとして何を望むんだろう。

 楽しいことなど何もないと虚無になっていたオレは心の底から楽しめる何かを求め、久しぶりにウメブラへ参加することを決意する。そして大会が始まり、プール番号のエリアに向かうと懐かしい声が聞こえてきた。

「お、ゲームが上手い方のいがらしじゃん!」

 そんな冗談交じりに声を掛けてくれたのは、よしもとゲーミング所属のプロスマブラー"RAIN選手"だった。久しぶりに会っても声を掛けてくれるのは嬉しいなと思いつつ、現状を鑑みてオレは苦笑いするしかなかった。

「いやいや、それもう過去の話ですから」

 開幕口を吐いて出てきたのは反論の言葉だった。オレは元プロゲーマーという微塵も価値がない肩書きになど興味はない。ましてや別タイトルであり、スマブラに比べれば決して大きくはない世界での話だ。

 過去の栄光にすがるほど惨めな姿はなく、そんな目でオレを見ないでほしかった。オレは現実を受け止めた。そのうえで何かこの先で目指す道標を求めてやってきたただの凡人。今はそれでいい。

 ただただそんな思いで抵抗を続けていたオレに対し、RAIN選手は真剣な表情に変わると思わぬ言葉を口にする。

「世界に挑んだことは誇ってもいいんじゃない? それは誰にでも出来ることじゃない」

 反論の言葉が止まる。何も過去の栄光にすがっている者として笑い者にしていたのではない。RAIN選手はオレのこれまでの取り組みを認めてくれていたのだ。

 大型大会で優勝しプロプレイヤーとなったこと。オレが得たのはそんな時間と共に色褪せるものではない。

 誰も信じていなかったことをこの手で成し遂げたこと。

 本気になればオレもヒーローになれると証明したこと。

 その事実こそが色褪せることのない成果であり、武器であることをRAIN選手は語ってくれたに違いない。そう感じたオレは自ら過程を貶めていたことを恥じつつ、静かにお礼を言ったのだった。

 そんな日のことを思い出したオレは失態を受け止めようと心を改める。成功であれ失敗であれ経験を活かし、学び、身につけ、上にいく。大事なのはただそれだけだと自分に言い聞かせながら。


 では、今回『EVO Japan 2020』において何故オレは今の実力以上の成果を出せたのか。それはこれまでずっと支えてくれた親友が大会当日にしていた通話で言ってくれた言葉にあると思っている。

「クロスさんのスマブラは遊びじゃないでしょ? 集中して頑張って」

 この言葉が錆びついていた勝者としての在り方を呼び覚ました。通話はリラックスするために行ったものであり、大会の意気込みを語っていたわけでもない。そんな中タイトルを変え復帰したばかりの駆け出しプレイヤーであるオレに対し彼はこう言ってのけたのだ。

 とにかく嬉しかった。酒の席で夢を熱く語り合い、その勢いで言ったような言葉ではない。esportsの世界で挑戦し続けてきたオレを認め、日頃から敬意を持ってくれていたからこそ出た言葉だ。その言葉が、タイミングが全てを物語っていた。

 初めての大舞台スマブラforWiiUの『ウメブラFAT』において、社畜だったために出張を被せられ挑戦すら出来なかった時。

 トッププレイヤーである相方の力ではなく、オレがこの手で優勝すると語りそれを実現した『EVO Japan 2018』の前日の夜。

 良い時もそうでない時もオレにとって忘れられないesportsでの歩みに、彼は必ず寄り添ってくれた。だからこそ掛けてくれた思いがけない言葉が、実力以上の成果へと導いてくれたに違いない。

 そんな人の優しさに支えられた『EVO Japan 2020』は、改めて応援してくれる人たちの期待を超えていく決意を固くしてくれた。これからもオレはきっとたくさんの壁にぶつかっていくだろう。どんなに未熟さに嫌気がさしても自分からは逃げられないからだ。

 でも、そんな挫折さえリアルに挑戦の過程としていく。そしていつしかかっこいいライバルたちと肩を並べ、最高のパートナーであるルカリオと共に最高のバトルで沸かせる。そんな時を信じながら修行を続けていく。次は『ウメブラJM2020』だ。

Dear Pokkén community

Introduction

 

The official tournamentPokemon World Championships 2019 to decide No.1 Pokken players will start soon. I'm so nervous and excited about getting to the best stage ever!

 

This time I want to tell you before WCS. About my history as a Pokken player and future. It will be a little longer,but I hope you will read it to the end.

 

 

 

WCS2016

 

I started Pokken from the WiiU version released in 2016. With Pokken WiiU decided to become a WCS event,I decided to purchase. Because I dreamed of becoming a champion at WCS. I have been playing games since 2 and a half years old. Pokken was the first game I bought after I decided that when I bought the game,"I'll be No.1 in this game!"

 

However,you cannot easily become a champion. I knew that,but decided to participate in WCS2016 at my own expense. I see No.1 and feel and accept a clear level difference from myself. That was my purpose and challenge.

 

This is a message given by the strongest Lucario player "Tanoshimi" before departure. This word gave me great courage. I still remember that,and I really appreciate him.

 


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This is a photo with the wonderful representatives of Japan. At this time,almost everyone did not know me. But I followed them. This is really crazy. lol

 


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Sightseeing with NA Players. Everything I see was fresh.



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With NA Lucario player Milln. I am grateful that he always supported me from this time.



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With Mr.Junichi Masuda. He is the origin of my passion and my No.1 hero.



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Dinner time.  I realized that the game crosses the language wall.



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All Pokkén players participating in WCS 2016. This is one of the most unforgettable photos in my life.

 

 

My results at WCS 2016 were best 16. After that,I continued practicing with Japanese players,but I did not get better for 2 years. However,thanks to the WCS 2016,I was able to continue to fight for the champion.

 

 

 

EVO JAPAN 2018

 

After that,I finally earn the first winning with "Mikukey" at "EVO JAPAN 2018". It was wondering that he became my partner at that time. But I beat strong player and contributed to the victory of the team. That was my big confidence.



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Scene of the victory. I'm just high tension. lol  This time I was very happy.



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With NA top player "ALLISTER" and TPCis "DC". DC gave me items of WCS2017.  I have been supported by him many times since I met him at WCS2016.



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Result image created by NA Pokkén community leader Burnside.  Being in the result image that he creates is an opportunity to make my activities known all over the world.

 

 

 

SwitchFest】

 

This tournament invited players from around the world.  Many players have recommended me to the organizer's tweets to recruit players to recommend.

 

Expedition may not be able to go even if invited.  Because it takes a lot of time.  But I wanted to meet everyone's expectations.  I immediately secured a break and I declared that I would participate if I became an invited player.  I was followed up by Twitter of the host organization "2GG" and danced joyfully when the DM from them was sent. lol  I'm still immature,so I always try to get the chance.  It was a good experience to stick to that attitude.

 

SwitchFest had no Japanese players other than me,but thanks to 2GG,I was able to participate safely and return home.  I was a Smash player before Pokkén,and it was one of my dreams to participate in the 2GG tournament.

 

 

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An image that informs me of my participation.



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I can't speak English.  But I was reall happy that the time spent with them.



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With "DC". He always watched by me during important tournaments.



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The Grand Final was a battle with LCF He and I are top Lucario players.  SwitchFest was one of the most unforgettable tournaments,with the best rivals battle.



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The scene just after the victory taken by 2GG.  This is the picture that I took the coolest in my life.



After this battle,LCF gave me such a message.

 

"Be strong. See you again at WCS!"

 

After that,he became EU representative as promised.

 

 

 

WCS2018

 

I finished 3rd at PJCS2018.  As a result,LCQ started,but I became an invited player.  WCS is like the Pokémon Olympics.  It is a stage that many people value WCS is important for me too,so I remember trying very hard.



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With Lucario players.  The bond is strong,the main is the same player.



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With "LCF" and top Gengar player "Tarutaro" and top Darkrai player "Midori".  It was very happy time.



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With Milln. I met him again for the first time in two years.  Fortunately,I was very high tension. lol



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With DC & top Suicune player "Elm". DC always cheered me on important tournaments.  I'm fine when I see him.



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With Japanese players & WCS2018 Champion ThankSwalot's parents. It's great that families have a connection with the community!



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With Mr.Masuda. He is the origin of my passion.  I hope I can meet him again this year.

 

 

My WCS2018 result was a loss in LCQ.  All other Japanese players entered Top8.  WCS2018 remains a very disappointing memory.  But I want to win because everyone is so strong.  It was a tournament that I thought so again.

 

 

 

Kanto6

 

Kanto6 is a big tournament in Japan.  It was a very high level tournament with top players from Japan.  The champion was supported by WCS2019 travel expenses.

 

In Kanto6's stream set,most of the game is full set.  The venue was enthusiastic and became the most successful tournament in Japan.

 

 

My personal stream shouts eSports!when playing Lucario's wall combo. lol  In Kanto6,many spectators imitated me when I made a combo.  This is one of the reasons I think Kanto6 is an unforgettable tournament.

 


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With professional eSports caster "Fuuhi".  The venue of RedBull increases everyone's coolness.



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Kanto6 top 3 players. "Subutan" & "Mikukey" are very very strong!



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My result is 3rd. I didn't become a champion,but I updated my personal best at Kanto.



 

What I want to convey

 

Many rival played enthusiasts,many supports become powerful,and all of them have drama like animation. I am proud to be in the Pokkén community for more than 3 years. I definitely was the most shining time in my life. Thank you very much.

 

However,I'm sorry. I have two things should tell you.

 

First,I exited the team V3ESports on August 15.

 

I did nt have anything to be proud of,but thanks to V3 I got one of the things I could be proud of as a gamer.  I heard that the team was thinking about extending the contract.  But if I stay on the team with inertia,I will damage the team.

 

Because I have lost the chance to continue working as a professional gamer.  I am very grateful that V3 respected my opinion.

 

SecondIf I fail to become a champion at WCS2019,I will retire Pokkén.

 

The passion for Pokkén is not gone. I love Pokkén. However,I was unable to continue my activities.  Because I'm very poor.

 

I have always acted with passion.  But I am a very low level person as a member of society. I am 28 years old and my parents will soon be 60 years old.  With my current income,I will eventually be unable to live.

 

I am not injured and my family is very fine.  So now we can live.  But what should I do if someone gets sick? At that time I will not be able to forgive myself.  So I made this choice.

 

I decided these right after Oceania INC. I have been worried about whether this decision is correct for about half a year.  To be honest,I still have trouble. But if it is the last play,I want to play at WCS. I will regret it unless I become a champion.  But I can't escape. I choose to face this problem.

 

 

 

Finally

 

Finally,I have only one request from you.

 

If I can become a champion,I would like to receive a trophy from Mr. Masuda. He is the origin of my passion and my No.1 hero.  If possible,can you tell my request to TPCi?

 

I have fought to show him my growth I know this is an impossible request.  But this is my last request for WCS.

 

WCS2019 will start soon.  Let's get excited to make WCS2019 the best of all time! I will do my best not to make this last.  Thank you for reading to the end.

 

 

ありがとうポッ拳コミュニティ

【はじめに】

 ポッ拳の最強プレイヤーを決める公式世界大会『Pokemon World Championships 2019』(以下WCS2019)が目前に迫りました。いよいよスタートかと思うと緊張もしますし、熱狂の渦の中に身を置けるかと思うと言葉にできないワクワクを感じています!

 今回はそんなWCSを前に、これまでのポッ拳プレイヤーとしての振り返りと伝えたいことがあって文章を書きました。やや長文にはなりますが、どうぞ最後までお付き合いください。

 

 


【WCS2016】

 オレがポッ拳を始めたのは、2016年に発売されたWiiU版からでした。これまでずっとWCSで優勝することが夢でしたが、ポッ拳は家庭版の発表とともに種目入りが決定したことで購入を決意しました。2歳半からずっとゲームをしてきた身でしたが、購入時に「このゲームで世界を獲るぞ!」と思って買ったゲームはポッ拳が初めてです。

 とはいえ、そんな簡単に世界一になれるはずもなく(笑)それくらいは分かっていましたが、そのうえで自費でWCS2016への参戦を決意しました。世界一をこの目で見ておくことで、自分との明確なレベルの差を体感し受け入れること。それが目的であり課題として設定したものでした。

 日本代表にして、最強のルカリオ使い"たのしみ選手"が出発前にくれたメッセージ。こういうことをトッププレイヤーが言ってくれることが、どれほど大きな力になったことか。このメッセージは今でもずっと覚えていて、本当に感謝しています。


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 激闘を勝ち抜いた日本代表たちとの1枚。ほとんど自分を知らない人にくっついていくって今思えばやばいですね(笑)


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 北米プレイヤーたちとの観光にて。見るもの全てが新鮮な時間でした。


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 北米のルカリオ使いMillnとの一枚。この時出会って以降、彼はずっとオレを応援してくれました。


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 世界で一番憧れるポケモンの生みの親、増田順一さんとの一枚。ファンのことをよく覚えていてくれるとても優しい方です。


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 国際交流を兼ねたディナータイム。ゲームの輪は言語の壁を超えるんだなと実感した楽しいひと時でした。


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 WCS2016閉幕時に全員で撮った思い出の写真。これは人生で最も忘れられない写真の一つになりました。

 WCS2016はベスト16でフィニッシュ。その後は日本のプレイヤーと知り合いながら修行を続けましたが、2年弱の間これといった成果は出ませんでした。それでもNo.1を目指して戦えたのは、この時の思い出あってこそ。最強のプレイヤーと最高の舞台をこの身で体感しておいたのは本当によかったですね。



【EVO JAPAN 2018】

 その後は2018年の"EVO JAPAN 2018"にて、最強のシャンデラ使い"Mikukey選手"とタッグを組んでついに悲願の初優勝を飾ります。今の実力ならともかく、当時は何故トッププレイヤーがオレと組んでくれたのかは不思議で仕方ありませんでした。それでも名立たる強豪を破り、優勝に貢献できたことはこの後の戦い全てに繋がる自信となりました。


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 優勝時の一枚。一人だけテンションおかしいですが、それだけ嬉しかったんです(笑)


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 北米のトッププレイヤーALLISTERと、WCSを支えるポケモン社TPCiのDCとの一枚。DCはWCS2017に参戦できなかったオレに、その時のグッズ一式をプレゼントしてくれました。WCS2016で会ってから彼には幾度も支えられています。


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 北米のポッ拳コミュニティリーダーBurnsideが作ってくれたリザルト画像。彼が作るリザルト画像に載ることは、世界中に自分の活躍を知ってもらうきっかけになります。


 オレの初優勝は多くの人の驚きの声を呼びましたが、その中で格ゲー界のトッププレイヤー"超選手"が言ってくださった一言。99%がまさかという反応の中、ただ一人優勝が似合うと言ってくれたことがとても強く心に残っています。ありがとうございました!



【SwitchFest】

 続く4月には北米の大型大会"SwitchFest"に参戦。この大会は世界各国からプレイヤーを招待する方式が取られており、推薦するプレイヤーを募集する主催側のツイートに対し、海外のプレイヤーがオレを候補に挙げてくれました。

 海外遠征はお金も時間もかかるため、候補に挙げてもらえたからといって気軽には参加できません。しかしせっかく名を挙げてもらえたならその期待に応えたい。そう思った真っ先に休みを確保し、招待選手に選んでくれるなら参戦することを約束すると宣言します。その後主催団体"2GG"のツイッターからフォローされ、DMが飛んできた瞬間は勝ち確だと思いましたね(笑)まだまだ未熟だからこそチャンスは常に全力で獲りにいく。その姿勢を貫いたことは良い経験になりました。

 SwitchFestは自分以外の日本人プレイヤー0という環境でしたが、2GGのおかげで無事参加し帰ることができました。2GGはスマブラシリーズで有名な団体で、ポッ拳の前はスマブラを熱心にプレイしていたオレにとっては2GGの大会に参加することは夢の一つでした。

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 参戦決定時に2GGがツイートした画像。これはポッ拳においてルカリオが登場するシーンなので、正しく参戦決定に最適の画像でした!


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 ともに競い合った海外のライバルたちとの一枚。英語は話せなくても彼らのおかげで最高に楽しい時間を過ごせました。


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 SwitchFestの会場にもいてくれたDCとの一枚。大事な大会の時はいつも彼が傍で見守ってくれました。


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 優勝決定直後の一枚。グランドファイナルが同じルカリオ使いにして幾度となく支えてくれた最高のライバル"XAbusoluted(現LCF)"とのルカリオ頂上決戦だったことでSwitchFestは忘れられない大会となりました。


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 2GGが撮ってくれた優勝直後のシーン。人生で一番かっこよく撮ってもらった写真です。

 この戦いの最後、LCFはこのようなメッセージをくれました。

 "強くあれ。WCSでまた会おう!"

 その後宣言通りヨーロッパ予選を勝ち上がったLCFとの再会は続きの中で。



【WCS2018】

 この年の国内予選で3位になったことで、現地予選スタートながらも招待選手としてWCSに参戦することが叶ったのがこのWCS2018です。WCSとは言わばポケモン界のオリンピックのようなもので、各種目におけるトッププレイヤーにとっては人生そのもの。オレにとってもまたそうであったことから、とても気合いを入れて臨んだことを覚えています。


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 ルカリオ使いが集まった時の一枚。同キャラ使いの絆は強い!


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 約束通り再会したLCFと最強のゲンガー使い"たるたろ選手"、トップクラスのダークライ使いにして多言語で世界を繋ぐポッ拳界最高のヒーロー"Midori選手"との朝食。めちゃくちゃ幸せな時間でした!


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 2年ぶりに再会した北米のルカリオ使いMillnとの一枚。思いがけない再会にとてもテンションが上がっています(笑)


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 最強のスイクン使い"エルム選手"と、大事な大会ではいつも見守ってくれるDCとのスリーショット。本当にDCは必ずいてくれるので、彼を見ると元気が湧いてきます。


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 日本人選手とWCS2018チャンピオンThankSwalotの両親との一枚。お父さんお母さんもまたコミュニティに溶け込んでるのがすごいですよね!ThankSwalotが強いのもよく分かります。

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 ポケモンの生みの親、増田さんとの一枚。WCSでの優勝を目指す情熱の原点とも呼べる存在です。今年もまた会いたいなぁ。

 WCS2018の結果は現地予選を突破できずに終わりました。同じく現地予選から参加した日本人選手は全員本戦に参戦しており、唯一壇上の下で応援するしか出来なかったことは本当に悔しかったこととして覚えています。でも、みんな本気でやってる。そのことを改めて実感し、相手がすごい人たちだからこそ勝ちたい。そう思えた大会でした。



カントートーナメント6】

 日本で行われた大型コミュニティ大会カントートーナメントの第6回目。国内トップクラスのプレイヤーが集う、世界的に見ても最高峰の難易度を誇る大会です。ここで勝つこと即ちWCSの王座に手を掛けるもの。そう言っても過言ではなく、サポートしてくださった企業様からは優勝者にWCS2019への渡航費支援権が贈られました。

 これによって各プレイヤー目の色を変えて本気で獲りにくることとなり、会場は観戦を含めて歴代最高の盛り上がりとなりました。配信席での試合8割がフルセットにもつれ込む激闘となり、日本ポッ拳コミュニティにおいて最高の大会となったと言って間違いないでしょう。

 余談ですがオレの個人配信でルカリオで壁コンボと呼ばれる攻撃を行う際「eSports!!」と叫ぶのが定番のネタになっているのですが、大会中そのコンボを行った際になんと観戦席全体が「eSports!!」って叫んでくれたんですよ! おかげで会場は最高に盛り上がりましたね!(笑)この大会が忘れられないものとなった理由の一つです。


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 実況席にてプロのeSportキャスター"ふーひさん"との一枚。会場がRedBullなのでeSports!!って感じですね(意味不明)


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 カントー6トップ3での一枚。二人とも本当に強くて戦っていてめちゃくちゃ楽しかったです!


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 結果は3位。惜しくも優勝はなりませんでしたが、強いプレイヤーの多い日本の大会でこれだけの成果を挙げられたことは自信になりました。



【伝えたいこと】

 このとおり多くのライバルが激闘を巻き起こし、多くの支えが力になり、その全てが漫画やアニメにも劣らないドラマを生み出してくれました。そんなポッ拳コミュニティに3年間以上身を置けたことを心から誇りに思っています。感謝の気持ちは言葉にはしきれませんが、間違いなくこれまでの人生で最も輝けた時間でした。本当にありがとうございます。

 そんな中とても心苦しいですが、どうしてもみなさんに伝えなければいけないことが2つあります。

 1つ目は契約満了に伴い8月15日をもってこれまで所属してきたチーム"V3Esportsを脱退した"ということです。(この記事については事前に説明しており、後日公式ツイッターから案内があるでしょう)

 プロの定義は明確に定まったものではありませんが、オレはこれまでV3のおかげでポッ拳のプロプレイヤーとして認知されてきました。それによって受けた恩恵は何より注目度の上昇補正であり、自らを律し高める精神面での上昇補正でもありました。

 思えばこれまでの人生で何一つ誇れるようなことなどなかったオレにとって、V3のおかげでゲーマーとして誇れることの一つを得られました。チームとしては契約の延長を考えてくれていたと伺っていますが、惰性でプロを名乗り、一員で在り続けることはチームに損害を与えかねません。

 後述する理由によりプロとしての活動を続けられる見込みが立たなくなってしまった故の決断でしたが、V3関係者の皆様が個人の意向を尊重してくださったことに心から感謝しています。本当にありがとうございました。


 そして2つ目は"WCS2019で優勝できなかった場合、この戦いを最後にポッ拳を引退する"ということです。

 大前提として伝えると、ポッ拳への情熱が消えてしまったわけではありません。1つ目の話にも大きく関わってくることですが、これは一言でまとめると"お金の不足で活動を続けることが許されなくなってしまった"ためです。

 自分の人生なので、自分のやりたいことをしていきたい。ポッ拳への情熱を盾にそんな考えを通してきましたが、オレは恥ずかしながら一社会人としてはとてもレベルの低い人間です。自身が28歳、両親がまもなく還暦を迎えることを考えると、このままではいずれ生活が破綻してしまうことは目に見えていました。

 怪我も病気もしないからこそかろうじて成立しているこの状況に、もしも自分や家族に不測の事態が起きたならば。自分が倒れれば家族に迷惑をかけ、家族が倒れれば守れるだけの力がない。この歳になってそこから目を逸らしていては、いつか必ず自分を許せなくなる日が来てしまう。そんな判断のもとこの決断に至りました。


 上記2つについては、オセアニア予選で本戦出場権を獲得直後に決めていました。約半年の間この決断が正しいのかずっと悩んでいて、正直今でも踏ん切りがついているとは言えません。しかし、最後になるならWCSがいいと心に決めてきました。優勝でない限りきっと後悔は残るでしょう。それでも向き合うべきことに向き合うという選択を取ろうと思います。



【さいごに】

 ゲームもビジネスもスキルに優れず、容姿に優れず、お金も時間もない。余裕という言葉が最もかけ離れたような自分が何故ここまで戦ってこれたのか。それはポッ拳というゲームだからこそ出来た情熱であり、世界中の人から応援してもらえたことによる奇跡だと思っています。

 "ユメは いつか ホントになるって だれかが歌って いたけど つぼみがいつか 花ひらくように ユメは かなうもの"

 ポケモンの名曲『めざせポケモンマスター』の一節ですが、みなさんのおかげでたくさんの夢を叶えることができました。改めて心から感謝いたします。

 いよいよWCS開幕の時がきました。戦う人も、観る人も、今年のWCSが歴代最高のものとなるよう盛り上がっていきましょう! オレもこれを最後にしないよう全力で頑張ります。最後まで読んでくださってありがとうございました。

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ポケモンが教えてくれたこと

【最近の世の中に思うこと】

 最近世の中を見ていて思うことの一つとして、ネガティブなニュースが蔓延しているということがある。
 世間一般的なニュースでいえば、池袋での高齢運転者による事故だったり、川崎での無差別の事件など、連日ワイドショーで取り上げられる悲惨なものが後を絶たない。
 eSportsだけに絞ってもプレイヤーの体臭問題から、配信におけるプレイヤーの容姿に対する誹謗中傷暴言など、数日あるいは数週間に渡って取り上げられる問題が非常に多い。
 こういった話題は視聴者の過去の記憶を呼び覚まし、自分もこういう嫌な思いをしたという声を上げる人を生む。

 先に断っておくと、これらを悪と言いたいわけではない。
 問題は問題として向き合っていくべきことだし、それから目を逸らすというのはポジティブではなく逃げと言っていいだろう。
 問題に向き合うことは戒めに繋がり、解決へ向けて試行錯誤をしましょうという警鐘となる。

 ただ、こういった警鐘が過剰になると人々は休む時を失う。
 監視されているかのように自分を縛る者。他者を非難し己の正当性を掲げる者。
 現代社会特有の膨大な情報の波はそれぞれの個性さえも比較対象とし、多くの人が見えない何かと戦っているとオレは感じている。
 こんな時代だからこそ必要なものは何か。その中で自分に出来ることは何か。自分の見えている世界だけでも引っ切り無しに取り上げられる問題の数々を前に、オレはそのことを考えることが多かった。



【心の拠り所】

 疲弊していく人たちが増える中、ある日ある時間は正反対のことが起きた。6月5日のポケモンダイレクトだ。
 最新作ポケットモンスターソード、ポケットモンスターシールドの最新情報に世界中が沸き、みんなが約半年後となる発売に期待を膨らませた。
 美しいポケモンの世界に感動する者。新ポケモンのイラスト描きに没頭する者。登場人物の考察と妄想に明け暮れる者。
 その時、その時間だけは多くの人が怒りや悩みを忘れ、争うことをやめていたように思う。

 その光景にオレは考えていたことの答えを見た。「みんな、心の拠り所がほしいんだ」と。
 よく、先々の楽しいことが見つかるとその時まで生きられると言う人がいる。以前は大袈裟な物言いだなと思っていたが、実はあながち間違いでもないのだろう。ポケモンは確かにみんなの心の拠り所となっていた。

 もっとこんな楽しい時間が増えたらいいのにな。ポケモンダイレクトを見て、そう感じたのはきっとオレだけではないはずだ。
 いろんな社会の問題には向き合いつつも、全てはみんなの笑顔に繋がるように。
 ポケモンの在り方は現代社会に求められる人物像を示していたように思う。



【オレに出来ること】

 オレが何かに取り組む際、いつも考えることとして「何なら頑張れるか。何のためなら頑張れるか」というものがある。前者は手段、後者は目的だ。
 オレがプロプレイヤーとして取り組むポッ拳は日頃の練習も楽しくやれる相性抜群の手段であり、その先で待つ世界一の舞台はオレの原点に通ずる目的だ。
 こうして個性を鑑みるとオレがいかに"ポッ拳のおかげで""ポッ拳だから"頑張れることが多いかを痛感する。
 だからこそ今オレに出来ること。それはポッ拳を通してみんなに楽しい時間を、笑顔をもたらすこと。
 人々の心の拠り所に。精神的支柱に。ポケモンが持つその一面を今のオレが担うには荷が重すぎる。
 でも「いつかそうなれたらいいな」では、オレのような凡人にそのいつかなんてやってこないことをオレはよく知っている。
 何よりオレがどれほどポケモンにたくさんのものを貰ってきたのか。恩返しなんてできるだけの力はないけども、ならばせめて貰ってきた力を活かせるように。
 そして何かを成し遂げた暁に、これはポケモンのおかげだと言うために。

 明日はいよいよポッ拳公式世界大会日本代表決定戦だ。オレは既にオセアニア予選で本戦出場権を持っているが、それに満足していては世界一は遠のいていく。
 何より本戦と異なり会場が日本なら視聴にあたり時差による時間の調整を必要としない。つまり最も日本人に観てもらえる大会が明日の公式戦なのだ。
 今や年に一度となった日本代表決定戦。みんな本気で獲りにくるだろう。だからこそそんな奴らにオレの全力をぶつけたい。

 勝つか負けるか。そんなものはやってみなきゃ分からない。でも、これだけは約束する。
 どんなバトルもオレは笑顔で勝利を獲りにいく。それがポケモンがオレに教えてくれた今オレに出来ることだからだ。

 いくぞ、ルカリオギルガルド!ダークミュウツー!オレたちのポケモンジャパンチャンピオンシップス2019篇、開幕だ!

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戦いたい

戦いへの渇望


 2019年5月1日、2日、東京でゲームのビッグイベントが行われた。スマブラSPの超大規模大会『ウメブラ Japan Major 2019』だ。

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ウメブラ Japan Major 2019 PV

 その時福井に住む親友のもとを訪れていたオレは、その配信に釘付けになっていた。オレはポッ拳の前はスマブラWiiUの大会に常連として参加しており、今でもスマブラはトップクラスに大好きなゲームだ。

 しかし、ポッ拳のプロプレイヤーとして活動する今は何かの機会がない限りは自分でスマブラをプレイすることはない。特別好きなゲーム故に、もう自分は勝敗を度外視するという意味でのエンジョイ勢としてはプレイできないことを知っているからだ。熱が入りすぎれば本業の邪魔になる。

 そんなこともあり意図的に距離を置いていたスマブラだったが、ウメブラJMの配信はなかなかオレの目を離してはくれなかった。別に視聴者とわちゃわちゃしたかったわけではない。特定の対戦カードを観たかったわけでもない。ただ、画面の向こう側にはかつて憧れた大舞台があった。それと同時にある記憶を呼び起こした。

 2015年のことだ。ウメブラが1周年記念として『ウメブラ First Anniversary Tournament(ウメブラFAT)』という大会の開催を決定。せいぜい中堅程度の実力でこそあったがスマブラWiiUのプレイヤーだったオレは、その大会を大一番と捉え修行に励んでいた。

 しかし、事前に予定があると再三伝えていたにも関わらず職場から離島への出張を強制され、オレのウメブラFATは敗北することさえ許されず幕を閉じた。当時のことは思い出すだけで吐き気がする。その日の為に鍛えていたライバルたちは勝敗に一喜一憂し、大会が幕を閉じれば次に向けて各々が決意を固め日々の修行に戻る。

 そんな青春とも言うべき熱い物語を紡ぐライバルたちとは裏腹に、オレは魂が抜けたような状態だった。

戦いたい。もっと挑戦したい。

 そんな叶うことのない願いを聞き、抜け殻のようだった当時のオレを支えてくれたのが福井に住む親友だ。配信の視聴中彼は仕事に出ていたため隣にはいなかったが、彼の家でスマブラのビッグトーナメントを観るというのは当時を思い出すにはキーが揃いすぎていたように思う。

 ポッ拳に自らの戦場を移したオレにとって、目指す舞台は当然公式世界大会ポケモンワールドチャンピオンシップスに他ならない。その熱狂たるや他のタイトルにも決して引けを取るものではない。この舞台こそ正真正銘の最強決定戦であり、誰が何と言おうとそこで勝った奴が最強だ。

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ポケモンワールドチャンピオンシップス2019ポッ拳部門GrandFinal

 GWの頭にヨーロッパ予選が行われ、4つあるうち現在2つの予選が幕を閉じた。ギリギリながらもオセアニア予選で本戦出場の切符を獲得しているオレは、ウメブラJMの配信を見届けて後、ゲーマーとしての渇望を思い出す。

勝ちたいと思える相手がいるなら、勝ちたいと思える舞台があるなら、オレは迷わず挑戦する。

 別に意識の高いことが言いたいわけではない。少し前ゲームとは全く関係がない場面で意識の高いこと言われ続け、相当に不快な思いをしたくらいだ。ただ、オレは挑戦したい。あの時敗者にさえなれず、人生に絶望した記憶が残っているからだ。オレはあの時の絶望を、親友への感謝を、一生忘れないと思う。

 今の世の中意識の高い言葉が溢れてる。ドヤ顔で事情も知らない奴から振り下ろされる刃物じみた正論に傷付いてる人は割とよく見かける。頑張れ。努力しろ。言ってほしいのはそんな言葉じゃないと思ってる人は少なくないはずだ。ただオレはこう思ってる。

頑張ればっかり言われるのは誰だって辛い。
でも、好きなことでさえ誰からも頑張れと言ってもらえないことはもっと辛いよ。 

 だから、好きなことに全力で。限りある命。全ては後悔しないためにな。



嘘をつかないこと


 GW終盤に行われた格闘ゲームの祭典『KVO×TSB2019』ポッ拳部門では4位という結果で終わった。100人規模の大会で4位ではない。参加者60人弱。それらが3人1組のチームになった中での4位だ。結果はもちろん、プレイ内容からもあまりに不甲斐なかったと思う。

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 原因として真っ先に思い当たるのが練習不足。偉そうに毎週攻略記事を書き、隔週で初中級者プレイヤーを招き丸一日指導して。でも、自分がトッププレイヤーであり続けるための努力は全然足りていなかった。

 記事の作成にはだいたい3~4時間くらいかかるし、指導についてはレベル差と指導効率の都合から自分はほとんどプレイしないなんてことも多い。これでは練習の時間も少なくはなるが、純粋に自己管理不足だと思っている。

 何故なら攻略記事の作成やモチベある新規プレイヤーへの指導というのオレだからこそ出来ることであり、プロとして他のプレイヤーとは異なる貢献が出来ているかという自身からの問いへ回答を出すものだからだ。仕事として言える活動のチャンスを貰えているのはとても恵まれていることだと思う。

 ただ、それでもその活動を僅か数%なりとも言い訳にしている自分がいたのも事実。しかしそれでは本末転倒というもの。何故ならオレは何よりルカリオと共に戦って勝ちたいプレイヤーであり、限りある時間の中No.1を獲りに本気で喰らいつくことこそがあの時の記憶を糧にするということだからだ。

 勝ちたいと思ってるのに、口にしてるのに、心のどこかで無理だと決めつけてはいないか。チャレンジャーとしての精神に微塵の綻びもなく戦うこと。敵はいつだって自分だ。だからオレは自分にこう言いたい。

なりたい自分に嘘はつくな。

 ポッ拳にはルカリオがいる。勝ちたいと思えるライバルたちがいる。世界一憧れる人に観てもらえる舞台がある。ならば、そこに全力でなければオレじゃない。

 6月に行われるポケモンジャパンチャンピオンシップス。そして8月にアメリワシントンD.C.で行われるポケモンワールドチャンピオンシップス。ここにポッ拳プレイヤーとしての全てをぶつけると決めた。もう迷いはない。オレは本気で獲りにいく。

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